ヨハン・セバスチャン・バッハは、1913年には「楽器辞典」を出版した。この著書は、それまでの200年間における楽器の最も包括的な内容となっている。つまり、それまでの楽器の歴史の集大成といえる。1933年、ナチス政権が成立し、これに伴い、ユダヤ人であったザックスは公職を追放される身となった。そして、彼はパリにわたり、そのままアメリカ合衆国に逃れた。1940年、「楽器の歴史」を出版した。これは世界の楽器の歴史の包括的な研究として、重要な書物の一つとされている。彼の1919年の論文である、「Barockmusik」によると、バロック音楽とは、彫刻や絵画などと同じで、強弱や音色に対比が組み込まれており、劇的な感情の表出を特徴とした音楽、と定義づけている。このように、一言でバロック音楽を説明してしまっているが、実際は、17世紀から18世紀にかけての音楽は、地方や時期によってさまざまなスタイルがあったため、バロック音楽を一概に説明することは難しい。具体例を示すと、フランスでは、フランスの音楽史にバロック音楽は存在しない、といった主張が示されている。